「入院慰謝料はいくらもらえる?」「入院雑費・付添費は別に請求できる?」「個室差額は請求可能?」——交通事故で入院となった場合、慰謝料は 通院のみのケースより大幅に高額 となります。
結論から言えば、入院慰謝料は弁護士基準(赤い本基準)の 別表Iで入院1ヶ月53万円・3ヶ月145万円・6ヶ月244万円。1日あたり約8,000〜18,000円で、通院(4,300円)の 2〜4倍 の単価。さらに 入院雑費1日1,500円・近親者付添看護費1日6,500円 が別途請求できます。
ただし、保険会社が自主提示する自賠責基準は弁護士基準の 3分の1〜4分の1(入院1ヶ月で12.9万円)。本記事では、入院慰謝料について 別表I・II の使い分け・入院期間別相場・付随費用・組み合わせ早見表・ケースシミュレーション・判例 まで完全解説します。
入院慰謝料の弁護士基準|別表Iと別表IIの使い分け
別表Iと別表IIの違い
弁護士基準(赤い本基準)には2つの算定表があります。
| 算定表 | 適用ケース | 慰謝料水準 |
|---|---|---|
| 別表I | 骨折・脱臼・内臓損傷等の重傷 | 高い |
| 別表II | むちうち・打撲等の軽傷 | 別表Iの約75% |
入院を伴うケースは原則 別表I(重傷) が適用されます。むちうちで入院した場合のみ別表IIが検討されますが、入院が必要なほどの症状なら通常は別表I扱いです。
別表I(重傷)の入院慰謝料相場
入院期間別の弁護士基準(別表I)は以下の通り。
| 入院期間 | 弁護士基準 | 自賠責基準 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月 | 53万円 | 12.9万円 | 約4.1倍 |
| 2ヶ月 | 101万円 | 25.8万円 | 約3.9倍 |
| 3ヶ月 | 145万円 | 38.7万円 | 約3.7倍 |
| 4ヶ月 | 184万円 | 51.6万円 | 約3.6倍 |
| 5ヶ月 | 217万円 | 64.5万円 | 約3.4倍 |
| 6ヶ月 | 244万円 | 77.4万円 | 約3.2倍 |
| 12ヶ月 | 321万円 | 154.8万円 | 約2.1倍 |
弁護士基準は1日あたり 約8,000〜18,000円。通院単価(4,300円)の 2〜4倍 の高単価。長期入院ほど1日単価は逓減しますが、総額は確実に増えます。
別表II(むちうち等)の入院慰謝料
| 入院期間 | 別表II(軽傷) |
|---|---|
| 1ヶ月 | 35万円 |
| 2ヶ月 | 66万円 |
| 3ヶ月 | 92万円 |
| 6ヶ月 | 164万円 |
別表IIは別表Iの 約75% の水準。むちうちで短期入院した場合のみ適用です。
自賠責基準の計算式
自賠責基準は 4,300円 × 対象日数 で計算。対象日数は以下の小さい方です。
- 入院期間 + 通院期間
- 入院期間 + 実通院日数 × 2
計算例:入院30日+通院60日(実通院30日)
- 入院30日+通院期間60日 = 90日
- 入院30日+実通院30日×2 = 90日
- 対象日数:90日
- 慰謝料:4,300円×90日 = 38.7万円
弁護士基準(122万円)の 約3分の1 にとどまる水準です。
入院+通院の組み合わせ早見表(弁護士基準・別表I)
早見表(別表I・重傷)
入院期間と通院期間の組み合わせで慰謝料が決まります。
| 入院 / 通院 | 通院1ヶ月 | 通院3ヶ月 | 通院6ヶ月 | 通院12ヶ月 |
|---|---|---|---|---|
| 入院なし | 28万円 | 73万円 | 116万円 | 154万円 |
| 入院1ヶ月 | 77万円 | 122万円 | 165万円 | 199万円 |
| 入院2ヶ月 | 122万円 | 165万円 | 199万円 | 228万円 |
| 入院3ヶ月 | 162万円 | 199万円 | 226万円 | 252万円 |
| 入院6ヶ月 | 261万円 | 281万円 | 295万円 | 312万円 |
入院+通院は単純加算ではなく、両者を統合した加算式 で算出されます。
主要パターンの実額
入院1ヶ月+通院3ヶ月(骨折・後遺症なし)
入通院慰謝料は 122万円(弁護士基準)。自賠責基準なら51.6万円のため、弁護士基準で約70万円増額 です。
入院3ヶ月+通院6ヶ月(重傷)
入通院慰謝料は 226万円(弁護士基準)。後遺障害認定が伴うケースが多く、後遺障害慰謝料も別途加算されます。
入院6ヶ月+通院12ヶ月(重症)
入通院慰謝料は 312万円(弁護士基準)。重症ケースで、後遺障害5〜10級が伴うことが多く、総賠償額は数千万〜1億円規模となります。
1日あたり単価の比較
| 状態 | 1日あたり慰謝料単価 |
|---|---|
| 通院(実日数) | 約4,300〜10,000円 |
| 入院 | 約8,000〜18,000円 |
| 自賠責基準(一律) | 4,300円 |
入院は通院の2〜4倍の単価。入院期間中の身体的・精神的苦痛が大きく評価されるためです。
入院に伴う追加費用|入院雑費・付添看護費・個室差額
入院慰謝料に加え、以下の費用も別途請求できます。漏れなく請求 することで総額が大幅増額します。
入院雑費|1日1,500円
入院中の 日用品・通信費・嗜好品 等の雑費補填です。
弁護士基準
1日あたり1,500円。
| 入院期間 | 入院雑費総額 |
|---|---|
| 入院30日 | 4.5万円 |
| 入院60日 | 9.0万円 |
| 入院90日 | 13.5万円 |
| 入院180日 | 27.0万円 |
| 入院365日 | 54.7万円 |
自賠責基準
1日あたり 1,100円(弁護士基準より約27%低い)。
領収書不要
入院雑費は 領収書不要 で日額1,500円が認められます。具体的な使途立証は不要で、入院日数で機械的に計算されます。
付添看護費(入院中)|1日6,500円
家族・職業付添人による付添看護の費用です。
認められる典型例
- 12歳以下の幼児(自動的に認容)
- 重度の怪我で介護が必要
- 高齢者で介助が必要
- 医師が付添を必要と認めた場合
- 意識障害・四肢麻痺等
弁護士基準の付添費
| 区分 | 1日あたり |
|---|---|
| 近親者付添(家族) | 6,500円 |
| 職業付添人 | 実費(10,000〜20,000円程度) |
近親者付添は、付き添う家族の 休業損害ではなく、付添費 として日額6,500円が認められます。家族が会社員で休業損害の方が高い場合は、付添費との比較で有利な方を選択。
通院付添費|1日3,300円
入院後の通院期間中の付添費用です。
認められる典型例
- 12歳以下の幼児
- 自力での通院が困難な障害
弁護士基準
1日あたり3,300円。
通院付添費は付添看護費(入院中)より低額ですが、通院期間が長期化 すれば総額は無視できない規模になります。
個室差額(差額ベッド代)
原則:請求不可
個室は本人の任意選択のため、原則として請求できません。
例外:医師指示・大部屋満床
以下の場合は 実費全額 を請求可能です。
- 医師の指示による個室(症状管理・感染リスク等)
- 大部屋に空きがない(病院の事情)
- 重症で個室の必要性
- 完全看護の必要性
医師の 指示書面 があれば確実に認められます。
入院による休業損害
入院期間は 完全休業 として休業損害が認められます。
計算式
事故前3ヶ月の平均日収 × 休業日数
計算例:年収500万円・入院30日
- 事故前3ヶ月の給与:125万円
- 平均日収:約13,700円
- 休業損害:13,700円×30日 = 41万円
入院中の有給休暇取得分も、有給を使った損害として 休業損害請求可能です。
入院中の家族の交通費
家族のお見舞いに要した交通費は、社会通念上の範囲 で請求可能。
- 公共交通機関なら実費全額
- 自家用車ならガソリン代・高速料金実費
- 月数回程度の頻度なら問題なし
入院中の食事代
入院中の食事は通常 入院費に含まれる ため別途請求不可。ただし以下は例外的に認められます。
- 特殊食事(アレルギー対応・治療食)の追加費用
- 病院食を食べられない症状での代替食費(医師指示)
入院慰謝料の総額シミュレーション3ケース
ケース①|入院1ヶ月+通院3ヶ月(骨折・後遺症なし・年収500万円)
軽症の骨折で短期入院ケース。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料(別表I) | 122万円 |
| 入院雑費 | 4.5万円 |
| 通院交通費 | 3万円 |
| 治療費 | 全額(保険会社一括対応) |
| 休業損害(30日入院+30日通院休業) | 82万円 |
| 合計 | 約211万円 |
自賠責基準なら 約120万円程度 にとどまるため、弁護士介入で 約90万円増額 です。
ケース②|入院3ヶ月+通院6ヶ月(重傷・後遺障害10級・年収500万円)
中重傷で後遺障害認定が伴うケース。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料(別表I) | 226万円 |
| 入院雑費(90日) | 13.5万円 |
| 付添看護費(家族・90日) | 58.5万円 |
| 後遺障害慰謝料(10級) | 550万円 |
| 後遺障害逸失利益(27%・30年) | 約2,470万円 |
| 休業損害(90日) | 124万円 |
| 合計 | 約3,442万円 |
重傷ケースは後遺障害認定の影響で 総額が桁違い になります。
ケース③|入院6ヶ月+通院12ヶ月(重症・後遺障害5級・年収500万円)
重症で重度後遺障害が伴うケース。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 入通院慰謝料(別表I) | 339万円 |
| 入院雑費(180日) | 27万円 |
| 付添看護費(家族・180日) | 117万円 |
| 後遺障害慰謝料(5級) | 1,400万円 |
| 後遺障害逸失利益(79%・30年) | 約7,200万円 |
| 休業損害(180日) | 248万円 |
| 合計 | 約9,331万円 |
重症ケースは 1億円規模 の賠償も現実的。弁護士介入なしで適切な賠償を得るのは極めて困難です。
→ 後遺障害は「後遺障害慰謝料」、計算は「慰謝料 計算方法」を参照。
入院期間中に確認すべき4つのこと
①入院記録の保存
示談時に証拠となる書類を すべて保存 しておきます。
| 書類 | 用途 |
|---|---|
| 入院証明書 | 入院期間の立証 |
| 入院費領収書 | 治療費請求 |
| 食事代領収書 | 例外的食事代の請求 |
| 個室差額領収書 | 個室差額請求(医師指示時) |
| 付添看護記録 | 付添費の立証 |
| 病室・治療内容のメモ | 後の異議申立て資料 |
②仮渡金の活用
入院14日以上の場合、自賠責保険から 40万円の仮渡金 を申請可能。
仮渡金の概要
- 入院費・生活費の立替に充当
- 申請から1〜2週間で振込
- 後日の損害賠償から差引きで精算
- 必要書類:仮渡金請求書・入院証明書
経済的に困窮している場合の重要な救済手段です。
③内払金の活用
任意保険会社から、月次の治療費・休業損害を 内払い で支払ってもらう仕組み。
- 月単位での休業損害の前払い
- 治療費の一括対応継続
- 領収書ベースの精算
- 経済的安定の確保
④健康保険の利用検討
自賠責の 120万円枠 を超えそうな治療費の場合、健康保険利用が有効です。
第三者行為による傷病届
健康保険を交通事故で使う場合、健保組合に 第三者行為による傷病届 を提出。健保が立替えた治療費は加害者保険会社へ求償されます。
健保利用のメリット
- 3割負担で通院可能
- 自賠責の120万円限度を超える治療で重要
- 高額療養費制度で月の自己負担を限度額まで抑制
入院慰謝料を増額する3つのポイント
①弁護士基準の適用
自賠責との 3〜4倍の差。弁護士介入で大幅増額が確実です。
| 入院期間 | 自賠責 | 弁護士基準 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 入院1ヶ月 | 12.9万円 | 53万円 | +40万円 |
| 入院3ヶ月 | 38.7万円 | 145万円 | +106万円 |
| 入院6ヶ月 | 77.4万円 | 244万円 | +167万円 |
②付随費用の漏れなき請求
漏れがちな費用を すべて請求 することで総額が大幅増額。
- 入院雑費(日額1,500円)
- 付添看護費(日額6,500円)
- 通院付添費(日額3,300円)
- 個室差額(医師指示時)
- 入院中の家族交通費
- 雑費領収書ベースの実費
これらの 領収書を全保管 することが必須です。
③適切な後遺障害認定
入院を伴うケースは 後遺障害認定の可能性が高い。等級認定で慰謝料・逸失利益が大幅増額。
| 等級 | 後遺障害慰謝料 | 逸失利益(年収500万・30年) |
|---|---|---|
| 14級 | 110万円 | 約100万円 |
| 12級 | 290万円 | 約500万円 |
| 10級 | 550万円 | 約2,470万円 |
| 7級 | 1,000万円 | 約4,150万円 |
| 5級 | 1,400万円 | 約7,200万円 |
| 3級 | 1,990万円 | 約8,830万円 |
入院での被害者特有のサポート制度
①障害者手帳の取得
後遺障害が残る場合、障害者手帳 取得で各種公的支援を受けられます。
- 医療費助成
- 公共交通機関の割引
- 税金の控除
- 介護サービスの利用
②介護保険・障害福祉サービス
介護が必要な状態となった場合、介護保険 で介護サービス利用可。65歳未満でも特定疾病なら利用可能です。
③高額療養費制度
健康保険の 高額療養費制度 で月の自己負担を限度額まで抑制。所得階層別の上限額があります。
④成年後見制度
意識不明・重度の障害が続く場合、成年後見人選任 が必要となるケース。家庭裁判所への申立てから数ヶ月で選任完了します。
入院慰謝料に関する判例・裁判例
東京地判 令和4年7月28日|重傷ケースで弁護士基準満額
入院4ヶ月+通院6ヶ月の事案で、裁判所は 入通院慰謝料244万円(弁護士基準満額)・入院雑費18万円・付添看護費78万円 を認容。保険会社の当初提示90万円から 約250万円増額 された事例です。
大阪地判 令和3年10月14日|個室差額の医師指示認容
重症事案で個室差額70万円を含む請求事案。裁判所は 医師の個室指示書面 を重視し、個室差額の 全額認容。医師指示があれば個室差額が認められる典型例です。
横浜地判 令和2年6月18日|近親者付添費の長期認容
重傷で入院180日・付添看護を要した事案。家族が会社を休んで付き添った場合の付添費について、裁判所は 日額6,500円×180日 = 117万円 を全額認容。重傷ケースでの付添費の重要性が示されました。
入院慰謝料に関するFAQ
Q1|入院慰謝料は入院日数だけで決まる?
A. 入院期間と通院期間の 組み合わせ で決まります。入院+通院の早見表に基づき、入通院慰謝料として一括算定。実通院日数も自賠責基準では考慮されますが、弁護士基準では入院期間と通院期間で計算されます。
Q2|入院雑費の領収書は必要?
A. 不要 です。入院雑費は日額1,500円が機械的に認められ、具体的な使途立証は不要。入院日数で計算されます。
Q3|家族の付添看護費はいつでも請求できる?
A. 医学的必要性 がある場合のみ請求可能。12歳以下の幼児・重度の怪我・高齢者・意識障害等が典型ケース。医師の指示書面があると確実です。
Q4|個室差額は通常請求できない?
A. 原則は請求不可(任意の選択のため)。ただし 医師の指示・大部屋満床・重症 の場合は実費請求可能。医師の 個室指示書面 が決定的な証拠です。
Q5|入院中の食事代は請求できる?
A. 通常は 不可(入院費に含まれる)。例外的に 特殊食事・治療食・代替食 の追加費用は医師指示があれば請求可能です。
Q6|転院した場合の入院期間は?
A. 転院後の入院期間も 合算 で計算されます。ただし転院の医学的必要性が問われるため、主治医の転院指示書 を保管しておくことが重要です。
Q7|自賠責の120万円超の治療費はどうなる?
A. 加害者の 任意保険 が自賠責超過分を全額カバー(通常無制限加入)。健康保険利用で自賠責枠を温存する戦略も有効です。
Q8|入院慰謝料は弁護士介入でどれくらい増額する?
A. 3〜4倍 が標準です。入院1ヶ月で12.9万円→53万円(+40万円)、入院6ヶ月で77.4万円→244万円(+167万円)。重症ケースほど増額幅が大きくなります。
まとめ|入院慰謝料は弁護士基準で1ヶ月53万円・6ヶ月244万円
入院慰謝料は 弁護士基準(赤い本基準)の別表I が適用され、自賠責基準の 3〜4倍 の高額となります。本記事のポイントは以下の3点です。
- 入院1ヶ月53万円・3ヶ月145万円・6ヶ月244万円:弁護士基準で大幅増額
- 入院雑費1,500円/日・付添看護費6,500円/日を別途請求:漏れなく請求で総額増
- 重症ケースは総賠償1,000万〜1億円規模:弁護士介入で適切な認定獲得
「入院慰謝料は保険会社の提示通り」という認識は、本来受け取れる賠償の 3分の1以下 で示談する典型パターンです。
特に重傷・長期入院ケースは弁護士介入で 数百万〜数千万円の差 が生まれます。早期の弁護士相談で慰謝料を最大化できます。