発信者情報開示請求の完全ガイド

発信者情報開示請求とは?費用・期間・成功率を弁護士が完全解説【2026年最新】

「SNSに悪口を書かれた」「匿名で誹謗中傷を受けているが、投稿者を特定して訴えたい」「発信者情報開示請求の費用と期間はどれくらいかかるのか」——こうした悩みを抱える方は年々増加しています。

総務省の調査によると、インターネット上の誹謗中傷に関する相談件数は2020年以降急増しており、SNSの普及とともに匿名での攻撃的な投稿が社会問題化しています。そのような中、匿名の投稿者を法的に特定する唯一の手段として注目されているのが「発信者情報開示請求」です。

2022年10月にはプロバイダ責任制限法が大幅改正され、従来は2段階の裁判手続きが必要だったものが、1つの手続きで解決できる「非訟手続き(発信者情報開示命令)」が新設されました。この改正により期間は4〜6ヶ月に短縮され、費用も大幅に抑えられるようになっています。

この記事では、発信者情報開示請求の基本的な仕組みから、2022年改正の具体的な内容、SNS別の対応方法、証拠保全の重要性、費用・期間・成功率の実態、そして損害賠償請求まで、ネット法務に精通した視点から体系的に解説します。最後まで読めば、SNS誹謗中傷から自分を守るための具体的な行動指針が明確になります。

特に重要なのは**「ログ保存期間」という時間的制約**です。プロバイダがIPアドレスを保存している期間は3〜6ヶ月しかなく、この期間を過ぎると投稿者の特定が不可能になります。被害に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談することが何より重要です。


発信者情報開示請求の基本的な仕組み

発信者情報開示請求とは何か・基本的な仕組みを図解

発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、インターネット上の匿名投稿者の身元情報をプロバイダ(サービス提供者)に対して開示するよう求める手続きです。

なぜこの制度が必要なのか

インターネット上では多くのサービスが匿名または仮名での利用を認めています。X(旧Twitter)、Instagram、5ちゃんねる、Yahoo!知恵袋などのSNSや掲示板では、実名を公開せずに投稿できるため、誹謗中傷を受けても相手が誰なのかわかりません。

通常、一般人が他人のIPアドレスや個人情報を調べることは技術的にも法的にも困難です。しかし、各プロバイダは利用者のアクセスログ(IPアドレス・タイムスタンプ等)を一定期間保存しており、これを法的手続きによって開示させることで、投稿者の特定が可能になります。

開示される情報の種類

発信者情報開示請求で開示が求められる情報は、大きく2段階に分かれます。

第1段階(コンテンツプロバイダへの開示請求)

  • IPアドレス(投稿時に使用したIPアドレス)
  • タイムスタンプ(投稿日時)
  • プロバイダ識別情報

第2段階(接続プロバイダへの開示請求)

  • 氏名
  • 住所
  • 電話番号
  • メールアドレス

これらの情報を組み合わせることで、匿名だった投稿者の実名・住所を特定し、民事訴訟や刑事告訴に進むことができます。

開示請求が認められる要件

発信者情報の開示が認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

①権利侵害の明白性:投稿内容が他者の権利を明らかに侵害していること。名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害、業務妨害などが対象となります。

②開示の必要性:被害者が損害賠償請求などの権利行使のために発信者情報が必要であること。単なる好奇心や嫌がらせ目的での開示は認められません。

③正当な理由の存在:開示を求める合理的な理由があること。

これらの要件を満たす場合、裁判所が発信者情報の開示を命じます。逆に言えば、要件を満たしていない場合(たとえば批判的な意見の表明であっても事実に基づいているケースや、公人に対する正当な批評など)は開示が認められないこともあります。

対象となる投稿の種類

開示請求の対象となる投稿は多岐にわたります。

  • 名誉毀損投稿:根拠のない事実を摘示して他人の社会的評価を低下させる投稿
  • 侮辱投稿:事実を摘示せずに人を侮辱する投稿(「馬鹿」「犯罪者」など)
  • プライバシー侵害投稿:同意なく個人情報や私生活を暴露する投稿
  • 著作権侵害投稿:許可なく著作物を無断転載する投稿
  • 業務妨害投稿:虚偽の情報で事業者の業務を妨害する投稿
  • 個人情報暴露投稿:住所・電話番号・職場などの個人情報を無断公開する投稿

2022年改正(令和4年)で何が変わったか

プロバイダ責任制限法改正の新旧比較・非訟手続きの概要

2022年(令和4年)10月1日に施行されたプロバイダ責任制限法の改正は、発信者情報開示制度における最大の転換点です。この改正の背景と内容、そして実務への影響を詳しく解説します。

改正前の制度の問題点

旧制度では2段階の裁判手続きが必要でした。

第1段階:コンテンツプロバイダへのIP開示(仮処分) まずSNS運営会社(X Corp、Meta等)や掲示板運営者に対して、裁判所に仮処分申立を行い、投稿時のIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。

第2段階:接続プロバイダへの氏名住所開示(本訴) IPアドレスと投稿日時をもとに、インターネット接続プロバイダ(NTT、au、ソフトバンク等)に対して、別途訴訟を提起し、氏名・住所の開示を求めます。

この2段階の手続きには合計6ヶ月〜1年以上かかり、費用も100万円を超えることが珍しくありませんでした。また、最大の問題は「ログ消失リスク」でした。第1段階のIP開示手続きに時間がかかっている間に、接続プロバイダのログ保存期間(3〜6ヶ月)が経過してしまい、氏名住所の開示ができなくなるケースが多発していました。

改正後の新制度:発信者情報開示命令

2022年改正で導入された「発信者情報開示命令事件」は、非訟手続きという新たな枠組みです。

主要な改善点

①一本化された手続き:コンテンツプロバイダへのIP開示と接続プロバイダへの氏名住所開示を、同一の裁判所手続き内で行えるようになりました。裁判所が必要に応じてコンテンツプロバイダと接続プロバイダの両方に対して開示命令を出せます。

②期間の大幅短縮:従来の6ヶ月〜1年から4〜6ヶ月に短縮されました。特に「提供命令(旧:仮の地位を定める仮処分)」が迅速化されています。

③費用の削減:申立手数料は1件1,000円と低廉に設定されました。全体の弁護士費用も従来より抑えられるケースが増えています。

④担保金不要:従来の仮処分では担保金(30〜100万円)の供託が必要でしたが、新制度の開示命令申立では不要です。

⑤ログ消失防止のための提供命令:コンテンツプロバイダに対して、接続プロバイダの情報(IPアドレス等)を「提供する」よう命じる手続きも新設。これによりログ消失リスクが大幅に低下しました。

旧制度と新制度の比較

項目 旧制度(仮処分+本訴) 新制度(開示命令)
手続き数 2段階(コンテンツ+接続) 1手続きで統合
期間 6ヶ月〜1年以上 4〜6ヶ月
申立費用 数万〜十数万円 1件1,000円
担保金 30〜100万円必要 不要
ログ消失リスク 高い 低い(提供命令で防止)
弁護士費用合計 80〜150万円 40〜100万円

なお、旧来の仮処分による手続きも引き続き利用可能です。事案の性質によっては旧制度の方が適切なケースもあるため、弁護士と相談して最適な手続きを選択することが重要です。


開示請求の流れ:ステップバイステップ

発信者情報開示請求の全ステップ・ログ保存から投稿者特定まで

発信者情報開示請求は、発見から投稿者特定まで複数のステップを踏みます。各ステップの内容と注意点を詳しく解説します。

STEP 1:証拠保全(最重要・発見直後に実施)

誹謗中傷投稿を発見したら、最初にすべきことは証拠保全です。投稿は削除されてしまうと証拠が消えるため、発見直後の保全が極めて重要です。

スクリーンショットの取得

  • 投稿全体が見えるように複数枚撮影
  • URL(投稿のパーマリンク)が表示された状態で撮影
  • 投稿日時が確認できる画像を保存
  • 返信・引用ツイートなど関連投稿も保存

URLの記録 投稿の固有URL(パーマリンク)を必ずメモ帳等に記録します。後から削除されても、裁判手続きでURLが必要になります。

公証役場での確定日付(任意) スクリーンショットの存在を法的に証明したい場合は、公証役場で「確定日付」を取得することも有効です。証拠の信頼性が高まります。

Webアーカイブの活用 Wayback Machine(archive.org)やMagicalなどのアーカイブサービスでページを保存しておくと、後から削除された場合でも証拠として活用できます。

STEP 2:弁護士への相談

証拠保全が完了したら、できるだけ早く弁護士に相談します。ここで重要なのが「ログ保存期間」の問題です。

プロバイダがIPアドレスを保存している期間は3〜6ヶ月が一般的です。この期間を経過すると、技術的にIPアドレスが特定できなくなり、投稿者の特定は不可能になります。つまり、誹謗中傷投稿を発見してから3ヶ月以内に弁護士に相談することが強く推奨されます。

相談時に持参するもの:

  • スクリーンショット(紙または画像データ)
  • 投稿のURL
  • 被害の概要メモ(投稿日時・内容・被害の状況)

STEP 3:コンテンツプロバイダへの開示命令申立

弁護士が裁判所に「発信者情報開示命令」を申立てます。

申立て先は、SNSや掲示板等のコンテンツプロバイダ(X Corp、Meta、Google等)の国内拠点または日本の担当裁判所です。申立書には、問題の投稿のURL、投稿内容、権利侵害の具体的内容などを記載します。

裁判所はプロバイダに対して意見照会を行い、プロバイダが意見書を提出した後、裁判所が開示の可否を判断します。

STEP 4:IPアドレス・タイムスタンプの開示

裁判所が開示命令を出すと、コンテンツプロバイダは投稿時のIPアドレスとタイムスタンプを開示します。このIPアドレスから、投稿者がどのインターネット回線(プロバイダ)を使用していたかが判明します。

STEP 5:接続プロバイダへの氏名住所開示命令

IPアドレスと投稿日時をもとに、接続プロバイダ(NTT東日本、au、ソフトバンク等)に対して氏名・住所の開示命令を申立てます。新制度では、同一の手続き内でこの申立が可能です。

STEP 6:投稿者の特定完了

接続プロバイダが氏名・住所を開示すると、投稿者の実名・住所が判明します。これで発信者情報開示請求の手続きは完了です。

STEP 7:損害賠償請求・刑事告訴

投稿者が特定できたら、いよいよ民事訴訟による損害賠償請求、または刑事告訴を行います。この段階については後述します。


SNS別・プラットフォーム別の対応方法

X・Instagram・Facebook・5ちゃんねる別の開示請求対応比較

発信者情報開示請求の難易度や手続きは、プラットフォームによって大きく異なります。主要なSNS・サービス別に解説します。

X(旧Twitter)

開示のしやすさ:比較的容易

Xは日本国内での利用者が多く、日本法務対応チームが整備されています。開示命令への対応も比較的迅速で、IPアドレスの開示が認められるケースが多いです。

ただし、Xのサーバーは米国にあるため、国際的な手続きが必要な場合もあります。2023年以降は「X Corp」として組織変更されており、法的対応先も変化しています。弁護士を通じた正式な開示命令が最も確実です。

注意点:スマートフォンアプリからの投稿の場合、IPアドレスではなくデバイス情報が記録されていることがあります。また、投稿削除後もログは一定期間保存されています。

Instagram・Facebook(Meta)

開示のしやすさ:やや困難

Metaは米国本社であり、日本法への対応は法的手続きが必要です。任意の削除申請はフォームから可能ですが、発信者情報の開示は原則として法的手続き(裁判所命令)が必要です。

日本の裁判所が開示命令を出した場合、Meta側が対応する枠組みは整備されつつありますが、英語でのやりとりが必要なケースもあり、専門的な弁護士対応が求められます。

5ちゃんねる・2ちゃんねる系

開示のしやすさ:困難

5ちゃんねるはサーバーが海外にあり、運営者も実質的に海外に所在するため、日本の法的手続きへの対応が困難なケースがあります。ただし、ログが保存されていれば開示に応じるケースもあります。

弁護士が取得した裁判所命令を送付することで対応を得られる可能性があります。保存ログ期間が短いため(数週間〜数ヶ月)、早急な対応が必要です。

YouTube(Google)

開示のしやすさ:対応可能

Googleは日本法人があり、法的手続きへの対応体制が整っています。動画投稿者のGoogleアカウント情報(登録メールアドレス、電話番号等)の開示が可能なケースがあります。

コメント欄での誹謗中傷、動画での名誉毀損等が対象です。

Googleマップ・口コミサービス

開示のしやすさ:困難

Googleマップの口コミは匿名性が高く、投稿者特定は難しいですが、開示命令によって対応が得られることがあります。特に事業者への虚偽口コミ投稿は業務妨害として開示請求が可能です。

まとめ:プラットフォーム別の難易度比較

プラットフォーム 開示難易度 ログ保存期間目安
X(旧Twitter) 低〜中 約90日
Instagram 約90日
Facebook 約90日
YouTube 約90日
5ちゃんねる 数週間〜数ヶ月
Googleマップ口コミ 不明

費用・期間・成功率の実態

発信者情報開示請求の費用・期間・成功率の実態データ

発信者情報開示請求を検討する上で、費用・期間・成功率は最も気になるポイントです。実務上の実態を詳しく解説します。

費用の内訳

弁護士費用(着手金):30〜50万円

これは着手金(手続き開始時に支払う費用)です。事務所によって異なりますが、30〜50万円が相場です。複雑な案件や複数の投稿が対象の場合は高くなる傾向があります。

弁護士費用(成功報酬):5〜30万円

開示が成功した場合に支払う成功報酬です。着手金の20〜50%程度を成功報酬として設定している事務所が多いです。

裁判所への申立費用:新制度では1件1,000円(旧制度では数万円)

実費(郵便費・交通費等):1〜5万円程度

合計費用の目安:40〜100万円(旧制度では80〜150万円)

投稿者を特定した後の損害賠償請求訴訟は別途費用が発生します(着手金20〜50万円+成功報酬)。損害賠償が認められれば、弁護士費用の一部も相手方に請求できる場合があります。

期間の内訳

新制度(発信者情報開示命令)の場合の標準的な期間:

段階 所要期間
証拠保全・弁護士相談 1〜2週間
開示命令申立書作成 1〜2週間
プロバイダへの意見照会 1〜2ヶ月
裁判所の審理・命令 1〜2ヶ月
接続プロバイダへの開示 1ヶ月
合計 4〜6ヶ月

旧制度(仮処分+本訴)では6ヶ月〜1年以上でしたが、新制度により大幅に短縮されました。

成功率の実態

発信者情報開示請求の成功率は、事案の内容によって大きく異なります。

権利侵害が明白な事案(名誉毀損・個人情報暴露等):80〜90%

判断が微妙な事案(批判・風刺・意見表明との境界):50〜60%

全体平均:約70%

成功率を左右する最大の要因は「弁護士の専門性」です。ネット法務・情報法に精通した弁護士は、権利侵害の明白性を的確に主張でき、成功率が高い傾向にあります。また、「ログ保存期間内に手続きを開始できたか」も決定的な要因です。

弁護士なし・自力での開示の現実

一部のサービスでは、本人(被害者)が直接プロバイダに任意の開示を求めることも制度上可能です(プロバイダ責任制限法第5条の任意開示)。しかし実務上、プロバイダが任意開示に応じることはほとんどありません。

理由としては、プロバイダは発信者のプライバシーを守る義務もあるため、法的手続きによる命令なしには開示しないというポリシーを持っているケースが多いからです。

また、裁判所への申立書の作成・提出、相手方プロバイダとの交渉等は専門的な法律知識を要します。自力での手続きは現実的に困難であり、ほとんどの成功事例では弁護士が関与しています。


投稿者特定後の損害賠償請求と刑事告訴

投稿者特定後の損害賠償・刑事告訴の連携戦略

発信者情報開示が成功し投稿者の実名・住所が判明したら、次のステップは民事訴訟による損害賠償請求刑事告訴です。

民事訴訟による損害賠償請求

損害賠償の種類と相場

慰謝料:名誉毀損で50〜200万円、プライバシー侵害で30〜100万円、侮辱で30〜100万円が相場です。ただし、被害の深刻さ(職を失った、家族関係が破壊された等)によってはさらに高額になる場合があります。

業務妨害:事業者への虚偽投稿で営業損害が生じた場合、実損害(売上減少額)+慰謝料で100〜500万円、悪質なケースでは500万円超も。

弁護士費用相当額:認容額の10〜15%程度が損害賠償として認められるケースがあります。

調査費用:発信者情報開示に要した費用の一部も損害として認められることがあります。

示談による解決

多くの事案では、訴訟提起前または提起後に相手方が示談を申し出てきます。示談では、謝罪文・賠償金・投稿削除の約束等を内容とすることが多いです。示談が相当か否かは弁護士と相談して判断しましょう。

刑事告訴の活用

民事だけでなく、刑事告訴も有力な選択肢です。

名誉毀損罪(刑法230条):3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金

事実を摘示して他人の名誉を毀損した場合に成立。公訴時効は3年です。

侮辱罪(刑法231条):1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金(2022年厳罰化)

事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合に成立。2022年改正前は「30日以下の拘留または1万円未満の科料」と軽微でしたが、木村花さんの事件を契機に大幅に厳罰化されました。公訴時効も1年から3年に延長。

業務妨害罪(刑法233条・234条):3年以下の懲役または50万円以下の罰金

虚偽の情報を流布して業務を妨害した場合に成立。

刑事と民事を組み合わせる戦略

刑事告訴と民事訴訟を同時並行で進めることで、相手への心理的プレッシャーを高め、早期の示談・謝罪を引き出せるケースがあります。刑事事件として捜査が進むと、相手方が精神的に追い詰められ、示談交渉が有利に進むことも多いです。

信用回復措置の活用

名誉毀損が認められた場合、損害賠償に加えて「名誉回復措置」を求めることもできます(民法723条)。具体的には、新聞や雑誌への謝罪広告の掲載、または投稿者のSNSアカウントでの謝罪文投稿などが認められるケースがあります。


判例・裁判例

判例1:東京地判令和5年(X投稿の発信者情報開示)

X(旧Twitter)への誹謗中傷投稿に関し、被害者が新制度(発信者情報開示命令)を利用して申立てを行った事案。被告投稿は被害者の職業に関する虚偽情報を含んでおり、名誉毀損として権利侵害の明白性が認められた。裁判所は投稿時のIPアドレスおよびタイムスタンプの開示を命じ、さらに接続プロバイダへの氏名・住所開示命令も発令。手続き開始から約5ヶ月で投稿者の特定に至り、その後の損害賠償請求訴訟で110万円の賠償が認容された。本件は新制度の効率性を示す代表的な事例として実務上参照されている。

判例2:大阪地判令和4年(掲示板投稿者の特定と損害賠償)

匿名掲示板への書き込みにより、医師である被害者の医療行為に関する虚偽情報が拡散した事案。被害者は旧制度の仮処分を経て接続プロバイダへの本訴を提起。ログ保存期間ギリギリでの申立だったが、仮処分審尋期日に担保金を供託し迅速に進めることで投稿者の特定に成功した。損害賠償請求では、医師としての社会的評価の低下と精神的苦痛を認定し、慰謝料として160万円、弁護士費用として16万円の合計176万円が認容された。虚偽の医療情報拡散に対し高額賠償を認めた事例として注目される。

判例3:東京地判令和3年(非訟手続きモデルケース)

2022年改正法施行前に行われた試験的な非訟手続きの先行適用事例(改正前のパイロット事案)。SNSへの継続的な誹謗中傷投稿について、被害者が損害賠償請求のため発信者情報の開示を求めた。裁判所は従来の2段階手続きを改良した簡易的な手続きを採用し、コンテンツプロバイダと接続プロバイダを統合的に処理。手続期間を大幅に短縮した本事案は、2022年改正の立法に際して参考とされた実務上の先導事例であり、新制度の設計に大きな影響を与えた。


よくある質問(FAQ)

Q1. 発信者情報開示請求は誰でもできますか?

A. 原則として、権利侵害を受けた当事者(被害者本人)が請求できます。法人(会社)も権利侵害を受けた場合は請求可能です。なお、代理人(弁護士)が本人に代わって手続きを行うことが一般的です。手続き自体は技術的・法的に複雑なため、弁護士への依頼を強く推奨します。

Q2. 相手がVPNを使っていたら特定できませんか?

A. VPN(仮想プライベートネットワーク)を経由した投稿の場合、IPアドレスはVPNサーバーのものになります。VPNプロバイダが日本国内にある場合は、そのVPN事業者への開示請求が可能です。海外のVPNサービスの場合は国際的な手続きが必要で、特定が困難になるケースがあります。ただし、VPNを使っていても投稿者がSNSにログインしているアカウント情報(メールアドレス等)から特定できるケースもあります。

Q3. 投稿が削除されていても開示請求できますか?

A. はい、できます。投稿が削除された後も、プロバイダのサーバーにはアクセスログ(IPアドレス等)が一定期間保存されています。ただし、ログの保存期間が3〜6ヶ月と短いため、削除後であっても早急に手続きを開始する必要があります。

Q4. 開示請求にはどれくらい費用がかかりますか?

A. 弁護士費用の着手金が30〜50万円、成功報酬が5〜30万円、実費が1〜5万円程度で、合計40〜80万円が標準的な相場です。事案の複雑さや事務所によって異なります。投稿者を特定した後の損害賠償請求訴訟は別途費用がかかります。法テラスの審査が通れば費用の立替制度を利用できる場合があります。

Q5. 弁護士なしで自分で開示請求できますか?

A. 制度上は本人申立も可能ですが、実務上はほとんど成功していません。申立書の作成、法的主張の整理、プロバイダとの交渉、裁判所での審理対応など、専門的な法律知識が不可欠です。費用を抑えたい場合は、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談や費用立替制度を活用することをお勧めします。

Q6. 開示請求が認められなかった場合はどうなりますか?

A. 裁判所が開示命令を発しなかった場合、異議申立(抗告)を行うことができます。要件を満たしていると判断できる事案であれば、弁護士と相談して上級審への抗告を検討します。開示が認められなかった場合でも着手金の返金はないのが通常です(開示成功時のみ成功報酬が発生)。

Q7. 開示請求中に投稿がさらに拡散した場合はどうすればよいですか?

A. 開示請求と並行して、各プラットフォームへの削除申請(任意削除)や仮処分による削除命令を求めることができます。削除と発信者特定は同時並行で進めることが可能です。拡散への緊急対応が必要な場合は、弁護士に相談してベストな戦略を立ててください。

Q8. 開示請求後の損害賠償はどれくらいもらえますか?

A. 名誉毀損の慰謝料は50〜200万円が相場ですが、被害の深刻さ(精神的苦痛・実損害・職業への影響等)によって大きく変わります。業務妨害で実損害が立証できる場合は、さらに高額の賠償が認められることもあります。弁護士費用の一部(認容額の10〜15%程度)も損害として認められるケースがあります。


まとめ

発信者情報開示請求は、匿名のネット誹謗中傷被害者が投稿者を法的に特定できる唯一の手段です。2022年のプロバイダ責任制限法改正により、新制度(非訟手続き)が導入され、従来の6ヶ月〜1年から4〜6ヶ月に手続期間が短縮、費用も40〜100万円の範囲に収まるケースが増えました。

最も重要な点は**「ログ保存期間(3〜6ヶ月)」の制約です。この期間を過ぎると投稿者の特定は技術的に不可能になるため、誹謗中傷投稿を発見したら証拠保全→弁護士相談→開示命令申立**を迅速に行うことが成否を左右します。

成功率は事案の内容と弁護士の専門性によって大きく異なりますが、権利侵害が明白な事案では8〜9割が開示に成功しています。投稿者を特定できれば、民事訴訟による損害賠償請求(50〜200万円の慰謝料)と刑事告訴を組み合わせた総合的な救済が可能です。

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