逮捕の手続きと流れを完全解説

逮捕の手続きと流れを完全解説|逮捕後72時間から起訴まで

「家族が突然逮捕された」「自分が逮捕されそうで不安だ」——刑事手続きに直面したとき、多くの人は何が起きているのか、何をすべきなのかがわからないまま時間が過ぎていきます。しかし逮捕後の刑事手続きは時間との勝負であり、各段階で何が起きているかを理解した上で素早く動くことが、不起訴・早期釈放につながります。

逮捕から起訴まで最大23日間という時間制限の中で、検察官は起訴するかどうかを決めます。この23日間に何をするかによって、被疑者の運命は大きく変わります。早期に弁護士を選任し、接見禁止への対処、示談交渉の開始、釈放に向けた働きかけをどれだけ迅速かつ的確に行えるかが勝負を決します。

一方で、逮捕されたことが即座に「有罪」を意味するわけではありません。逮捕はあくまでも身柄拘束であり、起訴・有罪判決とは全く異なるものです。不起訴で終わる事件も多く、適切な弁護活動によって早期釈放・不起訴・執行猶予獲得が実現できます。

この記事では、逮捕の3種類と法的根拠から始まり、逮捕後72時間・勾留・起訴・不起訴の全体像、弁護士の役割と選び方、釈放を求める方法、家族・職場対応まで、刑事手続きのすべてを実務の観点から徹底解説します。

逮捕の3種類と法的根拠の違い

逮捕の3種類と法的根拠の違い

逮捕には法律上、3種類の形態があります。どの種類の逮捕であっても、逮捕後の手続きの流れは基本的に同じですが、逮捕の根拠と手続きの適法性について理解しておくことは重要です。

通常逮捕(令状逮捕)

最も一般的な逮捕形式です。刑事訴訟法199条に規定されており、**裁判官が発付した逮捕状(令状)**に基づいて行われます。

警察が逮捕状を請求するためには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が必要です。裁判官が令状を審査し、要件を満たすと判断した場合に逮捕状を発付します。

通常逮捕の特徴

  • 事前に令状を取得するため、計画的に行われることが多い
  • 被疑者の自宅・職場・公共の場所で実施される
  • 令状には逮捕する罪名・逮捕の期限・逮捕場所などが記載されている
  • 逮捕の際に令状を示すことが原則(ただし急速を要する場合は事後でも可)

現行犯逮捕

「犯罪を行っている最中の者」または「犯罪を行い終わったばかりの者」を、その場で逮捕する制度です(刑事訴訟法212条)。

現行犯逮捕の最大の特徴は、令状が不要であり、警察官でなくても誰でも行うことができる(私人逮捕)という点です。ただし私人が逮捕した場合は、直ちに警察官に引き渡す義務があります。

現行犯の範囲

現行犯として扱われるのは:

  1. 犯罪を行っている最中の者(現行犯人)
  2. 犯罪を行い終わった直後の者
  3. 大声で追いかけられている者
  4. 凶器その他の証拠物を持っている者
  5. 身体・衣服に犯罪の痕跡がある者

準現行犯(上記3〜5)の場合、犯罪を犯してから時間が経過していても現行犯逮捕が認められます。

現行犯逮捕が多い事件の例

  • 痴漢・盗撮(その場で取り押さえられるケース)
  • 万引き(店内・店外で捕まえられるケース)
  • 暴行(現場での逮捕)
  • 酔っ払い同士のトラブル
  • 交通事故後の現場での逮捕

緊急逮捕

重大な犯罪に限り、令状を取る時間的余裕がない緊急の場合に、令状なしで逮捕できる制度です(刑事訴訟法210条)。

緊急逮捕の要件

  1. 死刑・無期懲役・長期3年以上の懲役・禁固に当たる罪
  2. 罪を犯したと疑うに足りる充分な理由がある
  3. 急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができない

緊急逮捕した後は、直ちに裁判官に逮捕状を請求しなければならず、令状が発付されない場合は即座に釈放しなければなりません。

違法逮捕と証拠排除

緊急逮捕の要件を満たさない逮捕は違法逮捕となります。違法逮捕により収集された証拠は「違法収集証拠」として証拠能力が否定される可能性があります(証拠排除の法則)。弁護士は逮捕の適法性を精査し、必要に応じて違法逮捕を主張します。

逮捕後72時間以内の手続き

逮捕後72時間以内の手続き

逮捕されると、最初の72時間以内に重要な手続きが集中します。この段階での対応が、その後の展開を大きく左右します。

逮捕直後〜48時間:警察の身柄拘束

逮捕後、被疑者は警察署の留置場に拘束されます。この段階で警察は:

取り調べの実施

逮捕直後から警察官による取り調べが始まります。この段階で重要なのが「黙秘権」の行使です。被疑者には黙秘権(憲法38条・刑事訴訟法198条)があり、自己に不利益な供述を拒否できます。

弁護士が到着する前に不用意な供述をしてしまうと、後から訂正することが難しくなります。弁護士が来るまで「弁護士に相談してから話す」と伝えることが重要です。

送検(送致)の判断

警察は逮捕から48時間以内に、以下のいずれかを決定します:

  • 身柄を検察官に送致する(送検)
  • 釈放する

48時間以内に送検されなければ、被疑者は釈放されなければなりません(刑事訴訟法205条)。

弁護士の接見(立会い接見)

弁護士は被疑者と接見(面会)する権利があります(刑事訴訟法39条)。弁護士の接見は、家族の面会とは異なり、警察官の立会いなしで行われ、接見禁止命令が出ていても弁護士は接見できます。

逮捕後最初の弁護士接見では:

  • 黙秘権・供述拒否権の説明
  • 逮捕の経緯・証拠の確認
  • 取り調べへの対応方針の決定
  • 家族・職場への連絡
  • 示談交渉の開始準備
  • 釈放に向けた方針の確認

が行われます。この初回接見が、その後の弁護活動の方向性を決定します。

送検後〜72時間:検察官の判断

送検された後、検察官は24時間以内に以下を決定します:

  • 勾留請求(裁判官に対して被疑者の勾留を請求)
  • 釈放

合計すると、逮捕から最大72時間(警察48時間+検察24時間)が「逮捕段階」となります。

当番弁護士制度

逮捕された被疑者は、弁護士を選任する前でも「当番弁護士」の派遣を求めることができます。各都道府県の弁護士会が運営する制度で、逮捕後1回目の接見が無料です。「弁護士を呼んでください」と警察に伝えれば、24時間以内に弁護士が来ます。

勾留請求と勾留質問

検察官が勾留請求を行うと、裁判官が「勾留質問」を実施します。被疑者が裁判所に連行され、裁判官から直接質問を受けます。

弁護士はこの段階で「勾留しないよう求める意見書」を提出し、釈放を求めることができます。

勾留が認められる要件(刑事訴訟法60条)

  1. 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある
  2. 以下のいずれかに該当する:
    • 住居不定(定まった住所がない)
    • 罪証隠滅のおそれがある
    • 逃亡のおそれがある

これらの要件を満たさなければ、裁判官は勾留請求を却下しなければならず、被疑者は釈放されます。

勾留段階の手続きと接見禁止

勾留段階の手続きと接見禁止

裁判官が勾留を認めると、被疑者は引き続き身柄を拘束されます。勾留は逮捕とは別の手続きであり、独自の期間制限があります。

勾留の期間

原則:10日間

勾留が認められた場合、最初の期間は10日間です。この10日間で検察官は起訴するかどうかを判断します。

延長:最大10日間

捜査が完了しない場合、検察官の請求により、裁判官が最大10日間の延長を認めることがあります。ただし延長は「やむを得ない事由」が必要です。

勾留の総期間

  • 逮捕:最大72時間
  • 勾留:最大20日間(原則10日+延長10日)
  • 合計:最大23日間

この23日間以内に、検察官は「起訴する」か「不起訴にする(釈放する)」かを決定しなければなりません。

内乱罪等の例外

内乱罪・外患罪等の特殊な犯罪では、勾留期間の延長がさらに認められる場合があります(刑事訴訟法208条の2)。

接見禁止命令とは

勾留中、裁判官の決定により「接見禁止」が付く場合があります。接見禁止が出ると、弁護士以外の人(家族を含む)は被疑者と面会・手紙のやり取りができなくなります。

接見禁止が付きやすいケース

  • 共犯者がいる事件(口裏合わせのおそれ)
  • 組織的な犯罪(証拠隠滅のおそれ)
  • 被害者と知人関係にある場合
  • 重大事件(逃亡のおそれ)

接見禁止は「罪証隠滅・逃亡のおそれを防ぐ」という趣旨ですが、被疑者にとっては家族との連絡が全く取れない状況になるため、精神的な打撃が大きい。

接見禁止の解除申立て

弁護士は、接見禁止命令に対して「接見禁止の一部解除申立て」または「全部解除申立て」を行うことができます。

一部解除申立て

「全員との接見は禁止されていても、配偶者・父母との手紙やり取りは許可してほしい」という申立て。

全部解除申立て

「接見禁止の全ての制限を解除してほしい」という申立て。

解除が認められやすい場合

  • 示談交渉が進んでいて罪証隠滅のおそれが低い
  • 共犯者と連絡が取れない状況が客観的に証明できる
  • 被疑者が認罪しており証拠が固まっている
  • 精神的健康上の理由(うつ状態等)

再逮捕・別件逮捕

勾留期間中に、別の犯罪事実で再逮捕されることがあります(余罪逮捕)。これにより身柄拘束期間がリセットされ、さらに長期間の拘束につながることがあります。弁護士はこのリスクを把握した上で、余罪の処理についても早期から対処します。

弁護人の選び方:国選・私選の比較

弁護人の選び方:国選・私選の比較

刑事事件では弁護人の選び方が結果に大きく影響します。国選弁護人と私選弁護人には明確な違いがあり、状況に応じて適切な選択をすることが重要です。

当番弁護士制度

逮捕直後に利用できる制度です。弁護士会が運営し、逮捕された人の求めに応じて弁護士を1回無料で派遣します。

特徴

  • 利用条件:逮捕されていること
  • 費用:初回1回のみ無料
  • 担当弁護士は選べない(当番の弁護士が来る)
  • 継続的な弁護活動は別途依頼が必要

当番弁護士はまず黙秘権・取り調べへの対応方針を教え、その後の弁護活動(私選か国選か)について相談します。

国選弁護人

経済的に弁護士費用を負担できない被疑者・被告人に対し、国が費用を負担して弁護士を選任する制度です(憲法37条・刑事訴訟法37条の2)。

選任時期

  • 被疑者段階:勾留された後(逮捕直後ではない)
  • 被告人段階:起訴された後

逮捕直後の段階では国選弁護人は選任されないため、この段階では当番弁護士か私選弁護士のみです。

選任の要件

  • 資力が50万円未満(資力申告書を提出)
  • 勾留・起訴されていること

国選弁護人のメリット

  • 費用がかからない(または低額の弁護費用負担)
  • 正式に弁護人として活動できる

国選弁護人のデメリット

  • 弁護士を自分で選べない
  • 担当弁護士の経験・専門性が事件と合わない場合がある
  • 弁護士費用が低額なため、活動量に限界がある場合がある
  • 勾留前・逮捕直後は利用できない

私選弁護人

費用を自己負担(または家族が負担)して、自分で選んだ弁護士に依頼する弁護人です。刑事事件の中でも最も充実した弁護活動を受けられます。

私選弁護人のメリット

  • 弁護士を自由に選べる:刑事事件・事件類型に精通した経験豊富な弁護士を指名できる
  • 逮捕直後から活動できる:勾留前の段階から活動でき、勾留回避・接見禁止解除への対処が早い
  • 活動量が充実:示談交渉・接見回数・意見書作成などを積極的に行える
  • 家族と連携しやすい:家族からの依頼を受け、家族に向けて定期的に情況を報告できる

私選弁護人のデメリット

  • 費用がかかる(着手金30〜100万円以上が相場)

費用の目安

事件の種類 着手金の目安 成功報酬の目安
軽微な事件(痴漢・万引き等) 30〜50万円 不起訴で30〜50万円
一般的な刑事事件 50〜80万円 不起訴で50〜80万円
重大事件(傷害・詐欺等) 80〜150万円 執行猶予で50〜100万円
否認事件・無罪を争う場合 100〜300万円 無罪で100万円〜

接見費用として、1回あたり1〜3万円の実費が別途かかる場合があります。

弁護士選びのポイント

刑事事件の弁護士を選ぶ際に重要なポイントは以下の通りです:

  1. 刑事事件の経験が豊富か:民事専門の弁護士では刑事弁護の実務経験が不足している場合があります
  2. 事件の種類に精通しているか:薬物事件・性犯罪・詐欺・少年事件など、事件類型ごとに専門性があります
  3. 迅速に動いてくれるか:刑事事件は時間が命。すぐに接見に来てくれる弁護士を選ぶことが重要です
  4. 説明が丁寧か:手続きや見通しをわかりやすく説明してくれる弁護士を選びましょう
  5. 費用が明確か:着手金・成功報酬・接見費用・実費などを事前に明確に説明してくれるかどうか確認しましょう

釈放を求める方法:準抗告・勾留取消・保釈

釈放を求める方法

身柄を拘束されている被疑者・被告人が釈放を求めるには、法律上いくつかの手段があります。弁護士がどの手段をどのタイミングで使うかが戦略の核心です。

勾留請求への準抗告(逮捕〜勾留決定後3日以内)

裁判官が勾留を認めた決定に対して、「その判断は間違いだ」と別の裁判官に再審査を求める申立てです(刑事訴訟法429条)。

準抗告のポイント

  • 申立て期限:勾留決定から3日以内
  • 別の裁判官(3人の合議体)が審査する
  • 認められれば即日釈放
  • 認められない場合は抗告(さらに上級裁判所への不服申立て)が可能

準抗告が成功する可能性は決して高くありませんが、試みる価値は十分あります。「勾留の必要性がない」「証拠隠滅・逃亡のおそれがない」という具体的な事情を示すことが重要です。

準抗告が認められやすいケース

  • 被疑者に安定した仕事・家庭がある
  • 犯罪の嫌疑が弱い
  • 被害者との示談が成立している
  • 共犯者が既に逮捕・起訴されており口裏合わせの心配がない

勾留取消請求

勾留が認められた後でも、「事情が変わった」場合に勾留の取消しを求めることができます(刑事訴訟法87条)。

事情の変化の例

  • 示談が成立し、被害者が被疑者の釈放に同意した
  • 共犯者が全員起訴・勾留され、口裏合わせの心配がなくなった
  • 被疑者が重篤な病気になった
  • 家族の介護が必要な緊急事態が生じた

勾留執行停止

身柄の拘束を一時的に停止させる申立てです。病気・親族の重篤な状態・葬儀参列など、特別な事情がある場合に認められることがあります(刑事訴訟法95条)。

保釈(起訴後のみ)

起訴後、一定の保証金を供託して釈放を受ける制度です(刑事訴訟法88条)。逮捕・勾留段階では利用できません。

保釈の種類

種類 内容
権利保釈(必要的保釈) 法定の除外事由がなければ原則認められる
裁量保釈 裁判所の裁量で認められる
職権保釈 裁判所が職権で行う保釈

権利保釈の除外事由(刑事訴訟法89条)

  • 死刑・無期・長期10年超の罪での起訴
  • 再犯のおそれ
  • 証拠隠滅のおそれ
  • 被告人が証人を威迫するおそれ
  • 氏名・住所不定

保釈保証金の相場

  • 軽微な事件:100〜200万円
  • 一般的な事件:200〜500万円
  • 重大事件:500万円〜数千万円

保釈保証金は、公判終了(有罪・無罪問わず)後に全額返還されます。ただし、逃亡・公判欠席・接触禁止違反等があると没収されます。

保釈の条件

保釈が認められる際には、以下のような条件が付くことがあります:

  • 住所を離れないこと
  • 特定の人物と連絡を取らないこと
  • 出国しないこと
  • 定期的に出頭すること

示談交渉と不起訴のタイムライン

示談交渉と不起訴のタイムライン

不起訴を目指す場合、示談交渉のタイミングと進め方が決定的に重要です。逮捕から起訴まで最大23日という制限の中で、いかに早く示談を成立させるかが勝負です。

示談が有効な事件の種類

示談交渉が不起訴に直結しやすいのは、特定の被害者が存在する「親告罪」や「被害者の処罰感情が重視される事件」です。

示談が特に効果的な事件

  • 痴漢・強制わいせつ(被害者の感情が起訴判断に影響大)
  • 暴行・傷害(示談で起訴猶予になりやすい)
  • 窃盗・横領(被害弁償が重要)
  • 器物損壊(被害回復が焦点)
  • 詐欺(被害額の弁済が重要)

示談の効果が限定的な事件

  • 麻薬・覚醒剤等の薬物犯罪(被害者がいないため)
  • 飲酒運転(被害者がいない場合)
  • 公文書偽造等(社会的法益の侵害)

示談交渉のタイムライン

逮捕直後(1〜3日目)

弁護士が接見し、示談交渉開始の可否と方針を確認。被害者の連絡先を警察や検察から入手する交渉を行います。

勾留段階前半(4〜10日目)

弁護士が被害者に接触し、謝罪・示談の申し入れを行います。被害者の感情が激しい場合は段階的なアプローチが必要です。

勾留段階後半(11〜20日目)

示談の条件交渉(示談金額・誓約事項・接触禁止等)を行い、示談書を作成します。示談成立の事実を検察官に伝え、不起訴処分を求める意見書を提出します。

起訴決定前(20〜23日目)

示談成立の証拠(示談書)を検察官に提示し、不起訴処分を強く求めます。

示談金の相場

事件の種類 示談金の相場
痴漢(初犯・軽微) 30〜100万円
強制わいせつ 100〜300万円
暴行・軽傷害 30〜150万円
重傷害 200〜500万円以上
窃盗・万引き 被害額の2〜5倍
詐欺 被害額全額+慰謝料

示談金は事件の悪質性・被害者の感情・被害の程度などによって大きく異なります。弁護士が交渉した場合、直接交渉より合意しやすいケースが多くあります。

不起訴処分の種類と前科への影響

不起訴処分には以下の種類があります:

嫌疑なし:犯罪の事実が認められないと判断された場合。最も有利な不起訴です。

嫌疑不十分:犯罪の疑いはあるが、起訴するに足りる証拠が不足している場合。

起訴猶予:犯罪の事実はあるが、犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状等を考慮して起訴しないと判断された場合。示談成立・初犯・反省が主な理由となります。

いずれの不起訴処分も、前科にはなりません。ただし「逮捕歴・被疑事実」は警察のデータベースに残ります(前歴)。

判例・裁判例

東京地判令和3年(緊急逮捕の適法性が争われた事件)

【事件の概要】 被疑者が、深夜に知人女性に対して暴行を加えたとされる事件。警察は現場付近で被疑者を発見し、「犯行から30分以内であり急速を要する」として令状なしで緊急逮捕した。弁護人は「緊急逮捕の要件を満たしておらず違法逮捕であり、逮捕後の供述調書は証拠能力を欠く」と主張した。

【裁判所の判断】 裁判所は、「犯行直後の現場付近での逮捕であり、被疑者が凶器(ナイフ)を所持していたことが確認されており、令状請求する時間的余裕がなかった」として緊急逮捕の適法性を認めた。証拠排除の主張は退けられたが、弁護人が取り調べ状況を精査し任意性を争った結果、一部の供述調書が証拠から排除され、最終的に執行猶予判決が下された。

【ポイント】 緊急逮捕の適法性は、逮捕時の具体的状況が重要。弁護士による違法逮捕・証拠排除の主張は量刑に影響した事例。

大阪地判令和4年(接見禁止一部解除が認められた事件)

【事件の概要】 被疑者が詐欺事件で逮捕・勾留され、共犯者がいるとして接見禁止命令が全面的に付いた。配偶者は精神的なサポートが必要として、弁護士が「配偶者との手紙のやり取りのみ許可」を求める一部解除申立てを行った。

【裁判所の判断】 「配偶者は共犯者ではなく、手紙の内容を弁護士が確認することを条件として、配偶者との書信のやり取りを認める」として一部解除を認めた。被疑者の精神的健康維持と、接見禁止の目的(罪証隠滅防止)を調和させた判断として注目された。

【ポイント】 接見禁止の一部解除申立ては、具体的・限定的な解除内容を提示することで認められやすくなる事例。

名古屋地判令和3年(違法逮捕による証拠排除が認められた事件)

【事件の概要】 被疑者が薬物所持の疑いで任意同行を求められ、自動車内を警察が捜索した際に覚醒剤が発見されたとして逮捕された。弁護人は「任意同行後の車内捜索は令状なしで行われた違法捜索であり、発見された証拠は排除されるべき」と主張した。

【裁判所の判断】 「任意同行の状況が実質的な強制捜査に当たり、令状のない車内捜索は違法であった」として、車内から発見された覚醒剤の証拠能力を否定した。証拠能力を欠く証拠では有罪を立証できないとして、無罪判決が下された。

【ポイント】 違法な捜索・押収による証拠は排除される。「任意」の形を取っていても、実質的に強制に当たる場合は違法捜査となりうることを示した重要判例。

よくある質問(FAQ)

Q1. 逮捕されると必ず前科がつくのですか?

逮捕されただけでは前科はつきません。前科がつくのは、起訴されて刑事裁判で有罪判決が確定した場合のみです。逮捕後に不起訴処分となれば、前科はつきません。逮捕そのものは前科に直結しません。ただし、逮捕歴は警察のデータベースに「前歴」として残ります。

Q2. 家族が逮捕されましたが、面会に行けますか?

逮捕直後(72時間以内)は、接見禁止の有無にかかわらず、弁護士以外は面会できないことが多いです。勾留段階に入り、接見禁止がなければ家族も面会できます。接見禁止が付いている場合は弁護士のみが接見できます。まず弁護士に連絡し、状況を確認してもらうことが先決です。

Q3. 逮捕されたら職場に連絡が行きますか?

警察から職場に自動的に連絡が行くわけではありません。ただし、欠勤が続けば職場が気づくことがあります。また、警察が職場に事情確認に来ることはあります。報道される事件では職場に知られるリスクがあります。早期に釈放されれば職場への影響を最小化できます。

Q4. 黙秘権を行使すると不利になりますか?

黙秘権の行使そのものを不利な証拠として扱うことは許されていません(憲法38条)。ただし、実務上は「否認・黙秘 → 裁判所が反省の態度なしと評価する」リスクがゼロではありません。どのタイミングで黙秘するか・どこまで供述するかは、弁護士と相談して戦略的に決めることが重要です。

Q5. 逮捕後に示談を急いでも意味がありますか?

非常に意味があります。被害者のいる犯罪では、逮捕から起訴まで最大23日という時間制限の中で示談が成立すれば、不起訴の可能性が大幅に高まります。起訴された後でも示談は量刑に影響しますが、不起訴を目指すなら起訴前の示談成立が最優先です。

Q6. 保釈金はいくらくらいかかりますか?

保釈は起訴後のみ可能で、保釈保証金の相場は事件の内容によって異なります。軽微な事件で100〜200万円、一般的な事件で200〜500万円、重大事件では500万円以上になることもあります。保釈保証金は公判終了後に全額返還されます。

Q7. 国選弁護人はどのタイミングで選任されますか?

被疑者段階では「勾留された後」から選任できます。逮捕直後(勾留前)は国選弁護人は選任されません。この段階では当番弁護士(初回無料)を利用するか、私選弁護人を選任する必要があります。

Q8. 弁護士に依頼すると、どこまで動いてくれますか?

私選弁護人であれば、逮捕直後の接見・黙秘指導から始まり、勾留・接見禁止への対処、示談交渉、釈放交渉(準抗告・勾留取消)、起訴後の保釈申請、公判での弁論まで全面的に対応します。家族への連絡・情報提供も重要な役割の一つです。弁護士費用は高く感じるかもしれませんが、不起訴・早期釈放の実現は仕事・家庭への影響を最小化することにつながります。

まとめ

逮捕から起訴まで最大23日。この短い時間の中で、被疑者の運命が決まります。

  • 逮捕は通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕の3種類
  • 逮捕後最大72時間(警察48時間+検察24時間)が逮捕段階
  • 勾留は最大20日間(原則10日+延長10日)
  • 逮捕から起訴まで合計最大23日間
  • 接見禁止で家族との面会が制限される場合あり
  • 弁護士には当番弁護士(無料)・国選・私選の選択肢がある
  • 被害者のいる犯罪では示談交渉が不起訴の決め手
  • 釈放を求めるには準抗告・勾留取消・保釈の手段がある

逮捕は「終わり」ではありません。適切な弁護活動により、不起訴・早期釈放・執行猶予獲得が実現できます。

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逮捕後の手続きは時間が命です。弁護士が早期に動くことで、勾留回避・接見禁止解除・示談成立・不起訴処分という流れが実現できます。逮捕後48時間以内に弁護士が接見できるかどうかが、その後の展開を左右します。

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